無痛分娩について
はじめに
分娩の痛みが母子の絆を強めることにつながるとの科学的根拠はなく、米国においてはローリスク妊娠であっても、分娩に伴う苦痛は、医師の管理下に安全な方法で取り除くべきと考えられています。
実際、多くの先進国(欧米、西欧、中国など)では約60-80%の妊婦が無痛分娩による出産を選択しています。
適切な無痛分娩はお母さん、そして赤ちゃんにとっても多くのメリットがあることが分かっています。
分娩時の痛み
子宮口全開大後、児頭による膣壁および外陰部の伸展が分娩経過中の最大の痛みと言われています。
無痛分娩の目的は、この最大の痛みを緩和することを目的とします。
無痛分娩とは
当院では、硬膜外麻酔という方法を用いて、陣痛、分娩時の強い痛みを緩和し、出産までの管理を行っています。
硬膜外麻酔とは、帝王切開術を含め、多くの手術で通常の麻酔として用いられる方法で、特殊な麻酔ではありません。
硬膜外麻酔による死亡者数はゼロであり、脊椎クモ膜下麻酔と合わせても死亡率は0.07/1万症例であり安全性の高い麻酔と言えます。
分娩時の強烈な痛みから解放されるため、全身の力が抜け分娩中のストレスが軽減されるとともに、産後の疲労が少なくなります。
赤ちゃんの通り道(産道)が弛緩するため、多くの場合分娩の進行がスムーズになります。
産後の診察および会陰縫合(必要時)も痛みなく受けることができます。
命にかかわるような危険は、麻酔薬のクモ膜下腔や血管内誤注入により起こりますが、これは試験注入(少量の薬液を試験的に投与し異常な感覚の有無を確認する)を行うことで回避することができます。
麻酔後の頭痛は比較的頻度の高い合併症(1-2%)ですが、鎮痛薬の使用や、重度の場合はブラッドパッチなどの特殊な治療を行うことで速やかに改善します。
非常にまれですが感染(硬膜外膿瘍)や血腫などの報告があります。
分娩への影響
無痛分娩による帝王切開率の上昇についてはこれまで多くの研究が行われましたが、現在は硬膜外無痛分娩を行ったことによる帝王切開率の上昇はないとされています。
無痛分娩を行えない場合
病的な肥満、強度の側弯症、刺入部付近の感染、麻酔薬アレルギーの既往、狭心症の既往のあるかたは硬膜外麻酔が行えない場合があります。
外来診察の際にお気軽にお尋ねいただくようお願い申し上げます。
自然無痛分娩と計画無痛分娩
自然無痛分娩
自然陣痛発来後に入院し、硬膜外無痛分娩を実施します。
計画無痛分娩
妊娠38週から分娩予定日までのあいだから、希望する日を選択し、計画無痛分娩の予定を組みます。
無痛分娩に対応できない可能性があることをご了承ください。
入院時の大まかな流れ
- 入院当日は16時に来院していただきます。
※経産婦さんは、陣痛誘発剤を投与する当日9時に入院することがあります。 - 計画分娩および無痛分娩について説明します。
- 胎児心拍陣痛図検査を行い、胎児が元気であることを確認します。
- 内診を行い子宮口を評価します。
必要であれば頸管拡張を目的としたバルーンカテーテルを子宮内に留置します。
また、陣痛誘発剤を内服することがあります。 - 翌朝もしくは陣痛発来まで院内で自由に過ごしていただきます。
- 陣痛発来がなければ朝から陣痛誘発剤の点滴を開始し、段階的に増量します。
- 子宮口が6cm以上に開大し、痛みが強くなったところで硬膜外カテーテルから局所麻酔を投与し痛みを緩和します。
- 昼から夕方ごろの分娩を目指しますが、陣痛誘発剤を増量しても陣痛が発来しない場合は、投与を中止し翌朝から再度陣痛誘発剤の投与を行います。
くわしくは、スタッフへお尋ねください。